世田谷発電力を選べる社会へ―3月2日のフォーラムに参加

「電力を選ぶことは未来を選ぶこと」  

基調講演:環境ジャーナリスト 枝廣淳子さん

 枝廣さんはまず初めに、1900年頃の新聞で、100年後の予言と題して、未来のエネルギーに関する記事について話し始めた。馬車が交通手段であった当時、自動車が珍しい時代だった。しかし馬車が自動車に代わり、それも道路以外にも走るようになると予言されていた。そして、地下鉄やモノレールは夢の乗り物だったが、100年の間に、人類は予想以上の技術開発を進め社会が変わった。この予言の話は、私たちがこれからの100年後にどんなエネルギー社会にしていくのかと考える時、現在の考えにこだわらず、あらゆる可能性があることをイメージすることができる。

 20世紀は経済成長が優先の社会であったが、100年後は自分だけの幸せでなく一人ひとりの「幸せ」な社会をつくることを、大勢の目標にしたいと思った。枝廣さんの「誰もが幸せに暮らせる社会」のイメージは、安心して暮らし、次世代や人間以外の生き物、誰かにしわ寄せがいく上に成り立つ幸せではない。幸せが伴う経済成長にはみんなで応援し、「地域で暮らす人たちの幸せが損なわれる経済成長はまずい」という価値観が共有される社会。そして、何かあったらしなやかに対応して素早く立ち直る強さを持つことだ。

 3.11後、私たちは、コンセントの向こう側の人々の暮らしを初めて知った。故郷から避難した人たちや放射能汚染と向き合いながら暮らす人たち。消費者として自分にもその責任があることに気が付いた。自分だけの幸せはありえないことを実感した。

 地震だけではないが、私たちの暮らしは様々なリスクがあり、それを想定し備えることでしなやかに対応し、素早く立ち直ることが必要だ。例えば、短期的には効率が良くても、長期的にはリスクに備え多様なエネルギーの選択を、家庭でも準備しておくことだ。100年後はエネルギーの地産地消は当たり前の社会に代わっていると「予言したい。」大手事業所などで始まった電力の自由化。個人宅ではまだ、電力を選ぶことができない現状だ。電力を選ぶ社会に変えるのは、いつか?まさしく「今」わたしたちの選択にかかっているのだ。私たちがそれを望まなければ、スタートしない。

 枝廣さんは最後に、会場に呼びかけた。自分の頭で考えよう!自分で選んでいこう。行政の良いところは褒め、一緒に動いて行こう!しかし、まだまだまだ足らないところがあるから、声に出して求めて行こう!自立とつながりを深めて安心して暮らせる未来につなげるエネルギーにしていこう。

 枝廣さんの語り口はソフトだが、エネルギーを選べる社会はすぐそこまで来ているという力強いメッセージを感じた。 (F.T記)